■虐待サバイバー当事者からヒアリングした
「新しい虐待防止策」2022年度(厳選版)
文・今一生(フリーライター・編集者)
1.虐待・子どもの人権・親権について
学校で児童・親・教師が学べる機会を作って!
義務教育で発達年齢に合わせて毎年1回、「虐待とは何か」「子どもの権利とは何か」「親権者の責任とは何か」を学べる行事を作れば、早めに被虐待を自覚でき、児相による保護などで救われやすい。
そうした特別授業とセットで、学校や友人の家に泊まれるプログラムを作れば、家で虐待が日常化していることに初めて気づける子も増える。
また、「自分と友達の家の違い」について作文を書く授業がほしい。
2.成人した被虐待経験者は
役所で自立支援金を得て独立・自活できるようにして!
虐待のトラウマで精神病を患うと、働くことが難しくなり、虐待親との同居が延々と続く。
そこで、医者の診断書で親子関係に起因する精神病だと明記されたら、診断書を役所に持参するだけで、家を出る引っ越し代と生活資金を得られる「自立支援金」の制度を作ってほしい。
自治体が支出した「自立支援金」は、自治体が虐待した親へ請求すれば、自治体は予算を最小化でき、親権者だった人は支出を恐れ、虐待しにくくなる。
3.自己負担している虐待被害の治療費は
役所で全額返還し、親の負担にして!
虐待されて精神病を患っても、治療費を被害者の子どもが自己負担し続けている。
そこで、親子関係に起因する病気・障害であると診断書に明記されたら、診断書を役所に持参すれば、これまで払った医療費の全額が役所で即日返金される制度がほしい。
その後の医療費も含め、自治体は親に同額を請求する。親権者としての法的責任を果たさなかったツケを親に払わせる仕組みを作れば、親は虐待しにくくなる。
4.親に虐待された人は
時効なしに裁判ができるようにして!
未成年は法定代理人を共に裁判できるが、同居中の親を訴えることは難しく、時効になってしまう。
時効撤廃は国会で検討してほしいが、子どもが親を民事で訴える際に費用を自治体が払う条例を作れば、親はいつか訴えられる不安を持つため、虐待の抑止効果が見込める。
また、訴訟をしたい未成年には、自治体か国で宿泊施設・社会福祉士・弁護士を無償で提供し、賠償されるまで安心できる生活を保障してほしい。
刑事訴訟についても、強制性交等罪の公訴時効は10年、強制わいせつ罪は7年。7歳で性的虐待をされたら17歳までに訴えないと時効だが、親権者が子どもの居所許可権を持っているため、未成年にとって同居中の親を訴えるのは無理。
だからこそ、未成年時の被害には、時効撤廃に動いてほしい。
5.10歳以上に起業を学べる機会を提供し
自主避難の資金を作れるようにして!
10歳以上は虐待に耐えるのが日常になるため、虐待を自覚するチャンスがない。
そこで、商取引が可能とされる10歳から、自分で商品・サービスを開発し、売る技術を実践的に学べる無料の「子ども起業塾」を地域に作ってほしい。
法律で15歳までは雇われないため、業務委託か、起業するしか、家を出て暮らすための収入手段がない。15歳以上なら会社の社長になれる。
10歳から稼ぐ技術を学べれば、社長として稼ぎ始めた際、収益を会社名義の口座に貯金できる。親権者は子どもの財産を管理できるが、会社の金に手を付ければ犯罪だ。
子どもが稼げれば、親に生活の面倒を見てもらう必要がなくなる。
18歳まで3年間だけ耐えれば、親から自力で避難でき、売春などの違法な手段で家出する必要もなくなる。
起業塾では、商才のある仲間の会社の社員にもなれて、地域経済も発展する。
6.被虐待児を誰が緊急保護しても逮捕されない
「民間養護者制度」を作って!
現行法では、被虐待児を緊急保護した人が親権者から誘拐罪(未成年略取)で訴えられて警察に逮捕される。
そこで、保護した時に役所へ電話で「今から民間養護者として登録してください」と報告すれば、逮捕されない条例を作ってほしい。
そして、72時間以内に児相が一時的な事業委託書を発行し、最長2か月まで有効にすれば、その間に家裁は親権制限をかけられる。
こうすれば、一時保護の定員以上に被虐待児を保護でき、養護施設や里親などの社会的養護も容易になる。
児童相談所の新設予算がない今、この制度なら、子どもは親による虐待で殺されずに済む。
7.父母による親権の独占をやめて
子どもが親を選択・排除・追加できるようにして!
父母だけに親権を独占的に認めている民法は、2人にだけ子育ての全責任を押し付け、子育てを孤立化させ、虐待を動機づけている。
そこで、誰でも親権者になれるように法律を変えれば、誰でも被虐待児を保護できる(=親権フリー)。
養育の責任者=親権者が3人以上いれば、子どもの生活費・教育費などのお金や労力、時間も3分の1に減る。
4人なら4分の1だ(=親権シェア)。
これなら子どもは他の親権者の家へ安心して避難でき、虐待の温床である「家の閉鎖性」も打ち破れる。
この制度では、成人の親権希望者が役所に届け出ておき、その候補リストから子どもが面談し、親権者を選べる権利を保障する。
産み育ての親も含めて、恐怖や不安を与える親権者を排除・追加・選択できる権利も子どもに与えてほしい。
この親権フリー&シェア制度は、明石市のパートナーシップ・ファミリーシップ制度のように、「みなし親子」と認める条例を作ればいい。
8.未成年と虐待親には
カウンセリングを無償化して!
被虐待児が精神病でも、向精神薬の投与は好ましくないし、子どもにとって地域の精神科に通うのは、差別を受けやすい。
カウンセリングで虐待の事実を早期発見すれば、児相へすぐ連絡できる。
だが、保険の利かないカウンセリング料は高すぎる。
そこで、未成年のカウンセリング料は、市・県・民間寄付の財源の範囲で無料化を試みてほしい。
子どもがカウンセリングを通じて保護されたら、その子の親も「親権者としての責任能力不足」と認知し、無償でカウンセリングを受けることを義務づける。
9. 相談機関には
「虐待で苦しんだ元・当事者」を高給で雇って!
親に虐待されている子どもであっても、公的機関の相談窓口に足を運ぶのには勇気がいる。
あなたが14歳で父親からレイプされたら、誰に相談できるだろうか?
既に子どもを虐待してしまった親なら、なおさら相談しにくい。何の不幸もなく生きてきた人に叱られるのはイヤだし、有識者に正論で言いくるめられるのも怖いからだ。
そこで、当事者にとって相談の敷居を下げてくれるのは、同じ苦しみを負ったことのある「元・当事者」だ。性的虐待の被害を受けた人や、虐待親として加害者だった人などを市民から公募し、筆名で相談に応じる。
「元・当事者」が相談機関にいれば、虐待の被害・加害の当事者は相談しやすく、気持ちを分かち合いやすい。
同じ痛みを知っていることは、当事者どうしにしか分かち合えない固有の価値。
痛みを克服して生き残ってきた経験は他の相談員にはできない強みがあるので、高給で雇ってほしい。
元・当事者にとっては、虐待で壊された生活と自尊心の再建になる。
彼らは一般の相談員が犯しがちな間違いも具体的に指摘でき、弱者に寄り添った会話もでき、養護施設を子ども目線で改善する指摘もできるので、採用してほしい。
10.虐待した親を指導・教育・治療する
専門の矯正施設を作って!
定員以上に詰め込んでいる一時保護所も増えてきた。その先に送られる里親も足りず、養護施設も入所率は既に80~90%と上限が見えている。
そこで、子どもを保護するのではなく、加害者の親を入所・通所させる専門の矯正施設を作ってほしい。
そのために妊娠発覚時から親権者としての責任能力を確認し、責任を果たせるように鍛え、鍛えようがない親には親権制限の審判を急ぎ、子どもを救い出す施設だ。
子どもにひどい虐待をする親には、親自身が精神病や障害を抱えている場合もある。
そうでなくとも、労働意欲も子どもを養う意欲もない親もいる。
そのような親権者としての責任能力を果たせない親の元で育つ子どもは、虐待されやすい。
そこで、児相が虐待事案として認知したら親と面談し、親を矯正施設へ通所・入所させることを法律で義務づけてほしい。
これは、刑事事件に至る虐待事案と区別するための処置。親権制限で養育者がいなくなった子どもは、児相・親族・里親・施設だけでなく、子ども自身が安心できる場所を指名できる権利も法的に保障してほしい。
11.自分を虐待した親の介護・看護・扶養の義務を
成人後に破棄できるようにして!
父にレイプされ、妊娠・中絶した少女でも、親が死ぬまで扶養・看護・介護する義務を負う。
自分を虐待した親でも、子どもは貧困でない限り、親をケアする義務が民法で課せられているからだ。
成人したらケアする相手を自由に選べるようにしてほしい。
現行法の義務から逃れるには家出するしかないが、親が勝手に子どもの死亡届を出すと市民権が奪われるので、成人したら相互扶助の義務を無条件に破棄できる民法へ改正してほしい。
介護者がいない孤独な老後を思えば、子どもを虐待しにくくなる。
12.子どもが虐待被害を自覚できる機会と
気軽に相談できる機会を増やして!
学校では、「子どもの権利」や「虐待とは何か」を学べないため、被害の自覚がない子どもが圧倒的多数。
公立の小・中・高の児童・生徒向けに、自治体が地元の虐待サバイバーを公募し、年1回、学校で彼らの虐待被害を聞けるチャンスを設けてほしい。
13.妊娠発覚の時点で「父子手帳」を発行し
プレパパに親権・人権・虐待を教えて!
親権者としての法的責任や「虐待とは何か」、乳幼児を取り扱う基礎知識を知らない父親は少なくない。
そのため、育児放棄をしたり、赤ちゃんに脳障害を起こしてしまう親もいる。
そこで、妊娠時点で「父子手帳」を発行し、父親が知っておくべき上記3点はもちろん、自治体ならではの公共サービス(子育て相談窓口、子育て手当、出産祝い金など)を盛り込み、プレパパ向けのセミナーも産前から産後まで実施し、出席者には地元企業からお祝いの品を提供する仕組みを作ってほしい。
乳幼児の定期健診にも父親の参加を義務づけ、育児をしない親の親権の一時停止を自治体が家裁に求めたり、父親不在なら捜索をしてほしい。
14.「親権者責任能力判定試験」を実施し
不適格者は支援・治療・教育の施設へ!
貧困・借金・前科などの事情で、親権者の責任能力が乏しい親がいる。
彼らには心理的・経済的な自立支援が必要。
また、障がいや病気などで親権者の責任能力が乏しい親には治療やリハビリが必要だ。
さらに、子育てを始めるのに親権者としての法的責任や「虐待とは何か」、乳幼児の取り扱い注意などを知らない親が多すぎる。
そのような親を産婦人科で調査し、妊娠発覚時に「親権者責任能力判定試験」の受験を義務づけ、支援・治療・教育が必要な人には、出産前から福祉課・病院・学校などの専門機関への通所・入所を義務づける。
試験に出る知識は、ホームページで公開。
★参考図書『子ども虐待は、なくせる』(日本評論社)
★参考図書『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)
なお、前述の資料は、以下のイベントで参加者に配布されたものです。